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東京高等裁判所 昭和55年(ラ)276号 決定

抗告人 坂本喜美

右代理人弁護士 田沢孝行

主文

原決定を取消す。

本件競落は許さない。

理由

一  抗告の趣旨

原決定を取消し、更に相当の裁判を求める。

二  抗告の理由

原決定言渡の後である昭和五五年四月一〇日、抗告人は債権者に対し本件抵当権の被担保債権である別紙手形目録記載の約束手形金合計四八七万四八〇〇円のほか、これに対する各手形の支払期日以降の手形法所定年六分の割合による法定利息金の内金一二万五二〇〇円、および競売申立費用一四万二二一二円を支払い、残余の法定利息金債務の免除を受けたので、被担保債権、従って本件抵当権は消滅した。

三  当裁判所の判断

本件記録によると、抗告人と債権者は昭和五二年一二月二三日本件不動産につき、金銭消費貸借取引、手形債権、小切手債権を被担保債権の範囲とする極度額五〇〇万円の根抵当権設定契約を締結し、翌二四日、同設定登記を経たが、右根抵当権は昭和五三年一二月二六日の経過とともに別紙手形目録記載の各手形の所持人として債権者が同手形の第一裏書人である抗告人に対して有する手形金債権四八七万四八〇〇円および各手形の支払期日以降の手形法所定年六分の割合による法定利息金を担保するものとして確定され、昭和五四年四月一八日、本件競売申立がなされたこと、および抗告の理由とする事実(なお各手形の支払期日以降支払がなされた昭和五五年四月一〇日までの前記法定利息金合計は三四万九九二一円であるから、支払の免除を受けた法定利息金は、これより前記支払の一二万五二〇〇円を差引いた二二万四七二一円ということになる。)が認められる。

そして競落許可決定の言渡後でも、本件のように同決定確定前に、弁済などの事由によって被担保債権が消滅したと認められる場合には、競売手続の基礎となる抵当権も消滅したことになるから、競売は続行できなくなるものと解される。

よって本件抗告は理由があるから、原決定を取消し、本件競落を許さないこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 吉岡進 裁判官 手代木進 上杉晴一郎)

〈以下省略〉

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